田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。
EURO導入まであと1ヶ月半、イタリア人たちは「やっぱり本当だったんだねぇ」みたいな、実感が沸くような沸かないような不安と期待が入り混じった不思議な日々をすごしている。
もっともEUROという通貨が紙の上で導入されてからは久しいので、いままでだって、いろんな会計書類や店頭商品の値段がリラとEUROの両方で表示されていたが
今回のEURO導入はいわばその最終段階、つまり、紙幣や通貨が実際に流通しはじめる。
イタリア人がもっとも不安なのは、2002年1月1日から2ヶ月間だけはEUROとリラの両方が市場で使えるが、3月以降はEUROだけに統一されると言う点だ。
本年度の12月31日は銀行のキャッシュ・ディスペンサーなどすべての機械は紙幣を入れ替えるために運休で、来年からは引き出すおかねがリラではなくEURO紙幣で出てくる。もちろん6ヶ月間は銀行へ持っていけばリラからEUROの両替はしてくれるが、それを過ぎるとイタリア銀行までいかないとEUROには変えてもらえないそうだ。
いずれにしても新年になれば早くリラを処分しなくては、そんな雰囲気の中で、リラで払いたい人、リラを受け取りたがらない人が出てくるのは火を見るより明らかである。
それに平行して日常の小さな疑問が続出する。
リラの切手はどうなるんだ?印紙は?
EUROのものと引き換えてくれるという説と、2月までに使わないと損をするいう説と。
役所や実際にそれを取り扱う仕事をする人々に聞いても情報はさまざま。
しかし損をするというのでは、国の国民に対するサギではないか.......
ところで1EUROは1936,27リラである。
いままであまりに桁が多かったリラから、いきなり給与明細や銀行預金残高がEURO表示になったときの複雑な気持ちは説明しがたい。
がそれ以上に、とにかく計算がややこしい。
「だいたい2000リラだと思って2000で割ればいいよ」
ある意味ではそれで正しいのだが、それをいい口実に、いろんなものが値上がりする恐れもある。
例えば地下鉄、市バスのチケットはいままで1500リラだが、0.77468EUROというのもややこしいのでということで1EUROになるという。
EURO導入はインフレを呼ぶのだろうか?
たしかにフランスやドイツへ行くのに両替の必要はなくなる
が、そういった国々より比較的物価の安いイタリアの物価はこれを機に上向きに修正されてしまうかもしれない
もちろんビジネス等で共通通貨をもつメリットははかりしれないかもしれないが。
そんな経済論議の中でいかにもイタリアらしい楽観的推測がある。
それによるとイタリアの景気は大いに回復するというのだ。
その理由はGNPの3分の1とも言われるイタリアの地下経済、多くの人たちが銀行にも預けずに金庫や家に隠し持っているリラが表に出てくるからだという。
2002年の1月1日、おそらく銀行のキャッシュサービスの前にはEURO紙幣みたさに長蛇の列が出来るだろう。
イタリアのEUROコインのデザインがイタリアが世界に誇る芸術にちなんだものが多いことで、イタリア人が鼻を高くしているのも事実である。