田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井住友海上ミラノオフィス勤務。
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霧のミラノ、というと昔からどこかとっても詩的で美しい、そんな町を想像したものだが
実際この町に来て本物の霧を経験してみると、そんな情緒に浸ってみるどころか
青い空も星空も見えない上に、湿気がぴったりと肌にまとわりつくようなそんな寒さに閉口してしまう。
そして寒さだけならともかく、毎年この季節になると、ミラノッ子の足を大幅に乱してしまうこの霧、
今年はその弊害が例年にも増して大きな社会問題になりつつある。
10月のはじめに早朝のミラノ・リナーテ空港で離陸直前の飛行機が小型飛行機、さらには建物に追突
し、118人の命を奪うという大事故がおこった。
一番の原因がパイロットの視界をさえぎった霧である。
いままででも霧のひどい冬の朝には飛行機が出なかったり、或いは夜遅くミラノに着くはずの飛行機がジェノバのついたりということがたびたびあったが、
今回のこの事故で飛行機発着の安全規定が大きな問題となり改定された。
新規定によると飛行機の発着に必要とされる最低視界距離は、今までの75メートルに対し550メートル。
この規定が実施された翌日はリナーテ空港はほとんど閉鎖に近い状況、もうひとつのミラノの空港マルペンサも夕方以降70機の発着はすべてキャンセルされた。
それだけではない。ミラノに比較的近いベルガモ、ジェノバの空港も多大な影響を受け、要するに冬の間北イタリアでの飛行機による移動はまったく当てにならないものになってしまったという。
人の安全がもちろん一番。
飛行機が飛ばなくて予定が狂っても、何時間待たされても危険な状態で発着はしてほしくない。
が同時に今に時代、飛行機なしで都市の経済はなりたたないのも事実である。
輸送、ビジネス、観光.....一日に何万人という人がミラノを旅立ち到着する。
1月にはミラノの一大イヴェントミラノコレクションで世界中から人々を集めるミラノである。
リナーテ空港の事故では地上のレーダーが故障していたという信じられない話が最近明るみに出た。
とにかくこちらのほうは年内に整備されるというが、
この辺にもあまりにもお粗末な人とテクノロジーのギャップがある。
ミラノの冬の風物詩-霧-がなくなればいいとは思わない。
霧には霧で、情緒以外に きっとなにか役に立つ、或いは自然にとって必要なものがあるに違いない。
ハイテク、電子、宇宙時代のはずの今、テクノロジーと人と自然の共存を図って、環境にやさしい霧対策、なんてものがどこかから発明されないのだろうか?