田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井海上ミラノオフィス勤務。
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毎年この季節になると、ミラノコレクション、つまり世界中の女性を魅惑するミラノファッションのこの新作発表やファッションショーが、ミラノの見本市会場をはじめ、ミラノ市内の庭園や別荘などを舞台に華やかに繰り広げられる。
この秋行われるのは2002年春夏コレクションで、来春の流行は、シースルーとレースというだけあって、美しいモデルたちが胸をあらわにステージの上を歩いた。
プラダにいたっては、その金糸の布だけでできた衣装が周りをあっといわせたが、そういった一つ一つの報道が、今年はどこか浮いて見えたと周りのイタリア人が口をそろえて言う。
テロリストによるアメリカ惨事の影響で 今年は世界中から集まるバイヤーの数が例年よりずっと少なかった。
アメリカで今も傷ついている人々を思い、例年のような派手なパーティー、モデルやVIPを招いてのディスコやラジオ局のお祭り騒ぎは今年は計画されなかった。
その代わりに各デザイナーたちが企画したのは、新鋭のアーティストたちを紹介するスペース、ギャラリー、写真展などで、とっても真剣な面持ちで
何かを生み出す人々に焦点が当てられた。
ミラノ市も、時期をあわせて、主な美術館、展示会などを週末には無料開放し、市民の芸術との接触を奨励している。
そういった場所では連日入場を待つ市民の長蛇の列ができる。
市の文化コースも今年は更に充実し、参加を希望する市民も老若男女を問わずますます増加し、定員オーバーで受付を早めに閉める講座が続出しているという。
ミラノ郊外の都市では、ぶどうの収穫、ワインつくりなど、市民に自然に触れて、秋の一日を楽しみ味わってもらおうと、いろんな企画がこの秋目白押しだ。
その一方で毎日一日中アメリカ、そしてアフガニスタンの様子が報道されている。
空港、駅などの警備が非常に厳しくなり、あちこちで警官の姿を見かけるようになった。
いつ戦争が勃発しても不思議ではない、或いはイタリアにおいてもいつテロリストによる標的にされるかわからないという危機感と緊張感の中で、
教会に行く人が非常に増えたという。
ある会社の、定年まじかなイタリア人のマネージャーが言っていた。
「老後のためにと投資していた株やファンドが数日のうちに指の間からすり抜けるように減ってしまった。何のためにいままで努力して働いてきたのかわからない。これからは仕事より、一瞬一瞬を大切に楽しむことにするよ」
精一杯生きていることを楽しもうとする動き、生きている証を形にしようとする芸術に触れようとする人々、そして祈り、
この3つがもしかしたらイタリア人の、今回のテロ行為に対する典型的なリアクションかもしれない。
世界中のどの国でもそうであるに違いないが、今回のことで自分の中で何かが変わったと多くのイタリア人が感じているという。
自分に何ができるのか、友達との会話の中でそんなことが話題に上れば、絶望的になったり、怒りが込み上げてきたり......
アメリカの気持ちはわかるが、一般市民が犠牲になる戦争だけは避けたい、そうみんなが祈る中で
イタリアでは10月2週目のウイークエンドにイタリア中からアッシジに向かっての平和のための行進が行われる。