田中ちひろ
京都生まれ 大阪外国語大学イタリア語科卒業、88年イタリアのシエナに留学。91年よりミラノ在住。
著書「普段着のミラノ案内」(晶文社)をはじめ、新聞、雑誌、インターネットサイト等に執筆。三井海上ミラノオフィス勤務。
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イタリアでは今年は6月30日と7月1日の週末が第1回目のESODO(エソド)に当たった。
エソドとは旧約聖書出エジプト記、予言者モーゼに率いられて何十万というユダヤの民が一斉にエジプトを出たことにちなんで、イタリア人のヴァカンスのための大移動をいうが、事実、この週末には約700万人が車で、150万人が電車で、そして70万人が飛行機で 海や山、あるいは海外に向かったというから、まさに民族大移動だ。
このようにしてこれから8月の中旬まで、週が開ける毎に町からごそっ、ごそっと人が減っていく。
イタリア人の平均的なヴァカンス期間は2,3週間、仕事はもとより洗濯も料理も一切しないで この1年に1回のヴァカンスを徹底してたのしむ。行き先は80%が海で、子供がいる人たちの多くは海辺にアパートを少なくとも1ヶ月といったいう単位で借りてすごす場合が多い。
よくそんな余裕があるよねぇ。大抵の日本人はそういってため息を漏らす。
まず時間的な面で言うと、確かに社会がそういう仕組みになっている。
労働者側から言うと「人は誰でもゆっくりからだと心を休めて人生を楽しむ権利がある」。
雇用者側から言うと(そしてこの発想こそイタリア的だが)「労働者を労働意欲のある、効率のいい状態(つまりストレスや不満が溜まった状態ではなく)で雇用する権利がある」
経済的な面で言うと、確かにイタリア人のヴァカンス用予算はかなり大きい。
統計によると約30%のひとが一人当たり200万リラ(約12万円)、ほぼ同パーセンテージの人がその2倍から3倍をヴァカンスの予算に当てている。
一方20%が100万リラ前後、そして残りが更にその半分と財布の紐をゆるめない。
もっともヴァカンスの費用を捻出するのが大変な社会層ももちろんあって、(たとえば失業率が決して低くないイタリアでこの層が拡大の傾向にある)、そういう人たちの存在が大きな問題になりつつある。これに対して政府も特別安い利子でお金を貸せるシステムを懸案中とか。
ところで、お金を借りてまでヴァカンスをしなくてはいけないのかと私たちはつい思いがちだが、イタリア人の23パーセントがヴァカンスのためにお金を一時的に借りることに賛成、或いは抵抗を感じないという。
ヴァカンスでもっとも散財する層、共稼ぎで子供のいない夫婦の中には、定額貯金や株・フォンドなどへの投資に手を付けないで借金するひとも増えているというから、根本的に考え方が違うといってしまってもいいかもしれない。
ヴァカンス、ともかくそれはイタリア人にとって生きている人の権利。
遠くに行かなくても、ただ海の近くにある友達のうちですごすだけでも、大切なのは日常と切り離した時間を持つこと。
お日様に当たって、おいしいものを食べて、ゆっくり夕日を見て、ゆっくりと時を流してみる。
そうするとすこしづつ心に余裕がもどってきて、自分や周りがまたすこし好きになれるという。
この夏はそんなイタリア式ヴァカンスを試されてはいかが?