
八木宏美(やぎ ひろみ)
1952年鎌倉生。インプット・イタリア・ジャパン社 代表取締役。日伊コミュニケーショ
ン・アドバイザー。ボッコーニ大学、トリノ大学で教鞭をとる傍ら、日伊文化交流協会を設立し、ビ
ジネス日本語講座を開講中。その他、日本の官公庁・外郭団体等の技術・法律・産業・社会部門にお
けるイタリア調査を委託で行っている。
今も昔も日本人は、昼間の仕事の場はスーツでビシッと決めても、出先で泊った温泉旅館の夕食はくつろいだカッコウで、というのがお決まりのパターンであるが、これがイタリアでは大間違いの元となる。
昼間ジーンズにTシャツの銀行員も、夜の会食には、スーツで出向く。オフィスでラフな格好のイタリア人を見て、夕食時にわざわざ同様のラフな格好に着替えて参加した日本人が、正装のイタリア人に唖然とするのはよくある話である。
これは車をステータスとしてピカピカに磨いておく日本人と、メカニック部分の手入れはよくしていても、下駄履き感覚で汚れっぱなしにし、なかなか掃除をしないイタリア人の感覚の違いでもあるかもしれない。最も、これには盗難防止の自衛策も多分にあるのだが.......。
話を戻すが、夜の社交場でのおしゃれは、ルネサンス時代からイタリア人の伝統である。彼らにとって夜の食事は、昔から、楽しむために自分を演出し、アピールする正装の舞台である。家に帰ってシャワーを浴び、正装をして出かけるのは、一つの遊び心でもある。
遊びの場に参加して、趣向を凝らさないのは、ルール違反である。夜のレストランへの招待は、従って背広着用がルールであると思ったほうがよい。最もシックな色は黒である。例えばスカラ座観劇には黒は最もふさわしい(注、普通、不祝儀に黒は着ない)。
|